目次
第2章 三年後の中村さん:失語症は治るのか?/究極の言い間違い/「朱鷺」と「土器」は同じ?/障害の不可視性
第3章名を捨てて実をとる:サイフオトシタカネオクレ/気がつけば外国人/右脳の活用法
第4章十人十色:キーワード法/コブタヌキツネコ/文章を組み立てること,理解すること/不要は無用
第5章 この一言が私のすべて:「おはよう」/弘子さんの主張/より良いコミュニケーションのために/手と脳の不思議な関係
第6章 言葉の引き出しが見つからない:高橋でした!/ことば探し/手足は動くが復職できない/辞書はボクの愛読書
第7章 ウソのようなホントの話:これは現実だ/引きこもり,そして再起/もう一度輝くために/障害受容
第8章 失語があると半人前?:誤解されて/言葉を使わずに思考する/失語症の評価/話し言葉のチェックポイント/読み書きそろばん/忘れられないできごと
第9章 一度あることは二度ある:弁論部キャプテン/楽しく食べたい/コミュニケーションとは/言語の機能5 言語運用
第10章 失語症とともに生きる:ムカデのダンス/言語聴覚士のこと/障害とともに生きる
内容説明
宇宙語?で会話を続ける人。自分の書いた字が読めない?!ことばが出てこない!にわかには信じ難いさまざま症状。これが、脳梗塞やクモ膜下出血などの脳障害、交通事故などによる脳損傷が原因となっておこる言語障害、失語症の一例である。患者の数は多いにもかかわらず、実態についてこれまであまり知られていない。メンタルの問題、あるいはその症状を、痴呆や精神遅延、怠けであるなどと誤解されることも少なくない。この本では、周囲の誤解ゆえに苦しむ患者とその家族の気持によりそいながら、そのメカニズムと克服(リハビリ)の取り組みをやさしい語り口で説く。失語症の衝撃と研究への決意にはじまり、妻であり母である著者が、さまざまな患者と出会いながら続けてきた研究と言語聴覚士という仕事の重要さ楽しさが語られる。脳損傷は、いつでも誰にでも起こり得るということ、そして失語症とともに生きていく患者の姿から、「障害」との向き合い方を考えさせられる。また、失語という現象をとおして、人間の脳と認知の仕組み、視覚や聴覚など感覚器官の不思議な関係にも興味が広げられる。