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第II講 真理の帝国

産業的ドグマ空間入門

第II講 真理の帝国

思想界のブニュエルたる著者が、〈ドグマ人類学〉の誕生を告げた、近代以前から現代までを射程に収めた壮大な帝国論。

著者 ピエール・ルジャンドル
西谷 修
橋本 一径
ジャンル 思想 > 海外思想
出版年月日 2006/04/01
ISBN 9784409030660
判型・ページ数 A5・368ページ
定価 本体4,400円+税
在庫 在庫あり
 

目次

『真理の帝国』への導入(西谷修)  

日本語版への序  

緒 言  

予備考察
第一章 真理の問題は組織においてどのように現れるのか? /第二章 ドグマとは何か? すべてを知ることとすべてを語ることの産業化について/第三章 ここでの基本概念、<主体なきテクスト>について/第四章 註解による世界征服  

第Ⅰ部 ドグマ的機能研究の争点
第一章 産業組織の日陰地帯:1 ドグマ的現象は説明の情熱を挫く。この現象はまず美的に顕れる 2 真理への情熱と殺人。この問題の社会的抑圧に関する考察 3 社会的空間における個人の組織化。政治的エコノミーと主体性の問題/文献案内/ 第二章 主体の秩序から政治の秩序へはどのように移行するのか? 通告、およびゴルディオスの結び目の理論:1 絆という問題設定は言語的な問題設定である   2 絆の両義性とは主体の両義性でもある  3 絆――ここでは主体と政治とを区別する絆――の概念は、絶対的<他者>の言説との密着というドグマ的配置の論理を支える  4 政治的なものと主体との対置は、ドグマ的システムの歴史から見ればきわめて明白なある状況のもとで、政治的愛を機能させるひとつの演出である  5絆とは限界の隠喩(メタファー)だと定義することができる――・ゴルディオスの結び目について・行政的秩序と、主体を没主体化する傾向についての注記/第三章 規範化の基本的手順:1 準拠の統治 2 <法>の技芸を操作する。すなわち人の身体を再生産の法に合わせて動かすための知を操作する 3 魅了する  4 ことばを統御する――・文献案内/閑話休題:真理が位置する権力の場  映画に関する注記  

第Ⅱ部 歴史から論理へ――ローマ法の帝国
第一章 制度の父性、テクストの継承:1 操作の技術、すなわちフィクションの場から発するメッセージの論理の構築。  <すべてを受け入れる書物>(Pandectae)と<息をする法>(Lex animata)に関する所見 2 伝承という現象としてのローマ法の歴史 ・文献案内/第二章 真理の証拠を生み出す:1 科学史のなかのローマ法  2 証拠のなかの証拠、人体。近代的な心 - 身主義の法的基盤に関する注記  3 証拠のなかの証拠(続)。訴訟学に見られる心 - 身主義のいくつかの拠り所  4 心 - 身主義――文法的な不可能性としての――に関する最後の注記  ・文献案内/三章 敵でありかつ仲介者たる動物  知られざる真理の痕跡に関する注記 /第四章 神と地理  

補 遺:ソ連の法的機能に関する注記  

原 注/訳 注 /用語解説  

解題 普遍と限界について(橋本一径)  

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内容説明

西洋的伝統から生まれた規範システムは、知の体制や制度的組織の練り上げを通して、それだけがニュートラルで普遍的なものとして世界に適用されるようになった。他者の真理を誤りとし、自己の真理で置き換える、つまりは真理=文明の支配、これが帝国である。思想界のブニュエルたる著者が、〈ドグマ人類学〉の誕生を告げた、近代以前から現代までを射程に収めた壮大な帝国論。訳者による詳細解説と基本用語集を収録。


本書の構成は、一見捉えどころがないようでいて、実は周到に組み立てられている。産業システムが「自分について見ないでいる」部分に踏み込むことは、そのまま人間と社会との<ドグマ的構成>に触れることでもある。

全体は二部に分かれているが、第Ⅰ部では、産業システムのうちに隠されたドグマ的機能の役割が記述される。ドグマ的機能とは、人間が言語を通して社会的に生きる存在であることを可能にする基本的機能だが、それは知的に把握されるというよりは、まずは美的な体験のうちに現れる。主体や理性の構築に関わるこの部分は、殺人や性的欲望がどう代謝されるかという人類学的役割に深く関わっており、この種の問題を産業社会もまた逃れることはできない。そしていわゆる社会と個人との関係が一般に考えられているような対抗関係にあるのではなく、ドグマ的機能によってまさに分節されながら作り出されるといったことが、産業社会でもまた課題であることが示される。その第一章を受けて第二章では、「主体の秩序から政治の秩序への移行」が論じられるが、これは分離して結びつけるという言語の役割が、主体を構成する契機であると同時に、主体と社会を分節しながら組み込み、それによって主体を政治的秩序へと導くことが論じられる。

第Ⅱ部では、このような<産業システム>を可能にした西洋における規範的組立の定礎が、キリスト教とローマ法との合体によって成ったことが扱われ、それによって形成されたローマ・カノン法が<民法>の体系を<文明>として生み出したこと、言いかえれば、神聖化されたローマ法が、世俗的な<真理>の法的組立として、現代の<マネージメント>のやり方に至るまで反復されていることが論じられる。そして「埋もれたローマ法の歴史」そのものが、西洋的伝統に立つ社会の規範的組成を、「もうひとつの聖書」として支えていることが示唆されている。

そのようなことを念頭に、もう一度「目次」を通覧していただきたい。そうすると、ここで論じられていることが、グローバリゼーションの語られる現代世界にとって喫緊の問題を、きわめて根本的な形で扱っていることが理解されるだろう。(訳者、西谷修『真理の帝国』への導入より抜粋)

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