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北に渡った言語学者  新刊

金壽卿1918-2000

北に渡った言語学者

歴史と思想がなだれ込む圧倒的評伝

著者 板垣 竜太
ジャンル 思想
歴史
アジアの本
出版年月日 2021/07/30
ISBN 9784409520871
判型・ページ数 4-6・370ページ
定価 本体4,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに

第1章 植民地のポリグロット
1 為すより先に在る
2 言語学への道
3 ことばと思想

I 構造と歴史――金壽卿言語学のはじまり
1 構造言語学と史的言語学
2 訓民正音と音韻論
3 朝鮮語史を現代に接続する

第2章 解放と越北
1 三八度線を越える――二つの総合大学のあいだで
2 越北後の活動
3 言語政策と政治

Ⅱ 朝鮮語の〈革命〉――規範を創出する
1 新たな文字体系と金枓奉の文字思想
2 正書法改革と形態主義
 2‐1 頭音の固定表記
 2‐2 絶音符の導入
 2‐3 新六字母の導入
 2‐4 形態主義の二つの系譜
3 朝鮮語文法の構築
 3‐1 『朝鮮語文法』の成立過程
 3‐2 『朝鮮語文法』の特色
4 ソビエト言語学受容の脈絡

第3章 リュックのなかの手帖――朝鮮戦争と離散家族
1 回顧録の生成――家族離散の原点を回想する
2 文体とリアリティ
3 手記に刻まれた戦場
 3‐1 南へ
 3‐2 北への後退
 3‐3 再びの「南進」

第4章 朝鮮戦争下の学問体制再編
1 戦時下の綜合大学
2 科学院の出帆
3 スターリン言語学論文のインパクト

Ⅲ 民族の言語とインターナショナリズム
1 スターリン論文の受容
2 朝鮮語文法の再定立――「吐」の二重性
3 形態主義のポリティクス

第5章 政治と言語学
1 文字改革と社会主義国の「兄弟」関係
2 政治的批判と言語学的批判
3 金壽卿が学界から姿を消すまで

Ⅳ 〈主体〉の朝鮮語学
1 文法理論の〈主体(チュチェ)〉確立をめぐって
 1‐1 吐をめぐる論争
 1‐2 形態論における〈主体〉
2 朝鮮語文体論の構築
 2‐1 文体と文風
 2‐2 金壽卿の文体論
3 朝鮮語学の〈主体化〉
 3‐1 正書法の再改革
 3‐2 朝鮮語学史の革命伝統化
 3‐3 理論的権威の一元化

第6章 再会と復権
1 移住と定住、離散とつながり
 1‐1 朝鮮戦争前の移住と家族
 1‐2 朝鮮戦争と離散
 1‐3 南への定着と北米への移民
 1‐4 文通と再会の実現
2 再び見いだされた時間
 2‐1 活動再開と復権
 2‐2 朝鮮語史への回帰
 2‐3 黄昏

おわりに

著作目録・年譜
参考文献

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内容説明

北朝鮮に生きた天才言語学者の生涯を通して描く、壮大な20世紀史

ソシュールの翻訳で知られる小林英夫の教えを受け、朝鮮語学の確立に貢献した天才言語学者、金壽卿(キム スギョン)。しかしその人生は、戦火と冷戦に翻弄され波瀾に満ちたものであった。若くして10数ヵ国語を操り、構造主義をはじめとする最新の学術に精通したその才能がたどる苦難には、20世紀のすべてが凝縮されている。知への情熱、家族との離散、社会主義体制下での制約と創造。歴史と思想がなだれ込む圧倒的評伝。

金壽卿(キム スギョン)/1918年、朝鮮の江原道で出生。1940年に京城帝大(哲学科)を卒業後、東京帝大大学院(言語学講座)進学。1944年に京城帝大・嘱託。朝鮮解放後の1946年に越北し、創立したばかりの金日成綜合大学の教員となる。若くして朝鮮語学講座長となり、国の正書法や朝鮮語文法の確立に中心的な役割を果たす。1950年、朝鮮戦争の勃発後に家族と離散。1968年に学界から一度姿を消すが、約20年後に復帰。名誉が回復され、本人を主人公とした実話小説まで出される。2000年逝去。

本書のサポートページ
https://www.facebook.com/kimsookyung1918

索引(人名・事項)を公開しました(PDF、書籍には未収録)→

***

本書初版第1刷において、以下の間違いがありました。お詫びいたします。第2刷では訂正済み。(編集部)

39頁5段落1行目 リ・ギチュン→リ・ギュチュン
41頁3段落1行目 大きく規定していたとしても→大きく規定されていたとしても
74頁2段落3行目 四学科しかなく→三学科しかなく
98頁、後ろから7行目 漢字語に関する既定→漢字語に関する規定
144頁4行目 法令・決定・支持→法令・決定・指示
173頁、図4-2(備考) 右は[略]左は→左は[略]右は
211頁4行目、215頁5行目 言語文化研究所→言語文学研究所
233頁、図IV-1 『新朝鮮語綴字法』→『朝鮮語新綴字法』
235頁、5行目 朴相俊→朴相埈
349頁、註(15) それ人づてに→それを人づてに
356頁、註(7) 最高人民委員会→最高人民会議
365頁、註(40) パッジオーニ→バッジオーニ

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