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貧困と自己責任の近世日本史  新刊

貧困と自己責任の近世日本史

日本史像の刷新を試み、現代の問題意識に貫かれた渾身の歴史学

著者 木下 光生
ジャンル 社会
歴史
出版年月日 2017/10/10
ISBN 9784409520673
判型・ページ数 4-6・330ページ
定価 本体3,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序章
 第一節 本書の問題意識
 第二節 本書の視角と構成

第Ⅰ部 世帯経営から見つめる貧困

第一章 村の「貧困」「貧農」と近世日本史研究
 はじめに
 第一節 「貧農」の基準、「困窮」の基準
  (1)農民層分解論と「貧農」
  (2)農村荒廃論と村の「困窮」
 第二節 反「貧農」「荒廃」史観の登場
  (1)「重税」史観への批判
  (2)農村荒廃指標への批判
  (3)新しい小農経営論
 第三節 生活水準と貧困研究の到達点
  (1)「生活水準の歴史」をめぐる国内外研究の動向
  (2)現代貧困研究の到達点
 おわりに

第二章 一九世紀初頭の村民世帯収支
 はじめに
 第一節 世帯収支報告書の概要
  (1)史料全体の構成
  (2)『去卯年御田畑出来作物書上帳』の記載形式
 第二節 世帯収支報告書の信憑性
  (1)世帯の内実
  (2)収支の実態
  (3)機械的な数値計算
 第三節 世帯表の見方
 おわりに

第三章 家計から迫る貧困
 はじめに
 第一節 田原村全体の特徴
 第二節 世帯間比較からみた困窮主張村落の実像
  (1)総収入と持高
  (2)経営健全度と等価可処分所得
  (3)税負担と飯料・造用
 第三節 赤字世帯のその後を追う
  (1)しぶとく生き続ける大赤字世帯
  (2)破産と夜逃げに陥る健全世帯
  (3)貧困への道に法則性はあるのか
 おわりに

第四章 生き抜く術と敗者復活の道
 はじめに
 第一節 物乞いの諸相
 第二節 夜逃げ人の行く末
 おわりに

第Ⅱ部 貧困への向き合い方

第五章 せめぎ合う社会救済と自己責任
 はじめに
 第一節 「溜め」としての村
 第二節 社会救済と自己責任の狭間で
 おわりに

第六章 操作される難渋人、忌避される施行
 はじめに
 第一節 領主への御救要求運動と村内の独自対処
 第二節 難渋人の認定・操作と救済の傾斜配分
 第三節 救済方法の組み合わせと個別判断
 第四節 施行の忌避と市場的救済の選好
 おわりに

第七章 公権力と生活保障
 はじめに
 第一節 従来の「御救後退」史観
 第二節 御救は「後退」したのか
 第三節 新たな公権力像へ
 おわりに

第八章 個の救済と制限主義
 はじめに
 第一節 古代・近代の日本国家と個の救済
 第二節 個の救済の消滅と復活――中世・近世の日本社会
 第三節 長期史と比較史のなかの日本救貧史――おわりにかえて

終章
 第一節 村の貧困史からみた近世日本社会
  (1)個別世帯に寄り添った貧困史
  (2)自己責任と臨時性を基盤とした貧困救済
 第二節 長期的、比較史的な展望
  (1)日本貧困史のなかの近世史
  (2)比較史への道

あとがき

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内容説明

江戸時代の農村は本当に貧しかったのか

奈良田原村に残る片岡家文書、その中に近世農村の家計をきわめて詳細にしるした記録が存在する。本書ではその世界史的にも貴重なデータを初めて精緻に分析し公開。そこから導かれる数々の発見は、これまでの近世観を根底から覆し、世界水準の研究とも連携した歴史学の新たな出発ともなるだろう。なぜ日本人は貧困についてかくも冷淡で、自己責任をよしとするのか。日本史像の刷新を試み、現代の問題意識に貫かれた渾身の歴史学。

「著者をして、『貧困と自己責任の近世日本史』と題する本書の執筆へと駆り立たしめているのは、現代日本社会に対する怒りである。二一世紀日本は、なぜ、かほどまでに生活困窮者の公的救済に冷たい社会となり、異常なまでに「自己責任」を追及する社会となってしまったのか。それを、近世日本の村社会を基点として、歴史的に考察してみよう、というのが本書を貫く問題意識である。」(本書より)

序章公開(PDF)→

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