目次
第一章 戦後フランスの心‐政治(プシ・ポリティーク)――ラカン思想の舞台
1 六八年五月と衒学者
2 アジールからの脱出――戦後フランス精神医療小史
3 反精神医学あるいは純粋精神分析
4 反精神分析――現代思想の問い
5 精神分析家――司祭か、聖人か
第二章 理論の実践――アルチュセールとの距離
1 破門‐切断
2 外への誘い――アルチュセールの認識論的切断
3 〈科学の主体〉――精神分析の条件
4 「理論の実践」
5 ミレール――「縫合」、構造の構造
6 アルチュセール――イデオロギーの中での実践
7 原因‐真理へ向かって
8 対象の純粋喜劇
第三章 真理への情熱――ラカンのエピステモロジー
1 学知としての精神分析
2 真理への情熱とロゴス
3 私、真理が話す
4 精神分析家――現代のソフィスト
5 数理的形式化――マテームと真理
第四章 運命とのランデブー――ラカン、ドゥルーズ、ストア哲学
1 ストア哲学、ドゥルーズとの間で
2 「構造主義」再考
3 「運命の彩」
4 ラカンのストア的記号論
5 必然性から共運命へ
第五章 精神分析実践とマゾヒズム――教育の舞台装置
1 精神分析的行為の問い
2 理論家サド――不道徳な教師の不能
3 実践家サドのディナミスム
4 マゾヒズムの舞台装置
5 犠牲のドラマを越えて
第六章 行為と言説――六八年五月の閾の上で
1 六八年のジャック・ラカン
2 「提案」――精神分析家の知をめぐって
3 理論から言説へ
4 知の市場と大学
5 不能から不可能へ
第七章 〈科学〉時代の享楽身体
1 知‐身体/享楽身体
2 科学技術・環世界・排泄物
3 〈他者〉とは身体である
4 シニフィアンの雨、エクリの汀
5 性関係は書かれないことをやめない
6 バロック主義者ラカン
結論に代えて――「すべてでない」時代に
あとがき
索引
内容説明
精神分析家とは何か
1960年代政治の季節、それは精神分析にとっても画期となる時代であった。医者でもなく心理士でもない特異な存在としての精神分析家、何としてもラカンはそれを歴史のうねりの中から生み出す必要があった。起伏に満ちたその運動の軌跡を、具体的文脈に沿い同時代の視点から捉える、気鋭による白熱の論考。
「それゆえ本書が試みるのは、ラカン思想を、彼の唯一の情熱、つまり精神分析家の養成への情熱から理解しようとすることである。精神分析とはいかなる営みで、それはどのような存在を生み出すものか。ラカンの特に六〇年代の思索の鍵となる多くの概念――「精神分析家の欲望」、「精神分析的行為」、「パス」、「精神分析家の言説」――これらは、何より、精神分析家の生産という問いの周りを回っている。それを、「治療」という臨床的な目的論のみから捉えることは十分ではない。「精神分析家」そのものに込められた思想的な期待とは何だったのか、これを我々は、ラカンに向けて問いかけねばならない。」(本書より)
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