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紛争という日常  新刊

北アイルランドにおける記憶と語りの民族誌

紛争という日常

長期紛争における日常性へ着目し、綿密な聞き取りから人びとの紛争の記憶と物語に迫る。

著者 酒井 朋子
ジャンル 歴史 > 西洋史
人類学
出版年月日 2015/03/05
ISBN 9784409530481
判型・ページ数 A5
定価 本体6,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに

第一章 揺れる日常、変わりゆく記憶
 第一節 聖金曜日の<和平>合意後の北アイルランド
 第二節 移行期社会の記憶
 第三節 集合的記憶----能動性と受動性
 第四節 日常性の記憶
 第五節 本書の構成

第二章 長期紛争経験の語りの解釈学
 第一節 「そのときそれは普通のことだった」
 第二節 苦しみへの共感の落とし穴
 第三節 暴力の経験を物語るということ---第三のミメーシス
 第四節 語りを価値あるものと判断するのは誰か

第三章 社会的・歴史的背景
 第一節 北アイルランドにおける宗派と政治・民族意識
 第二節 分住と社会分断
 第三節 北アイルランド紛争における暴力の分布と性質
 第四節 語り手たち
 第五節 北アイルランドにおける歴史の記念行為の政治性

第四章 紛争という日常
 第一節 本章の視座
 第二節 紛争の始まり----分住化と解体するコミュニティ
 第三節 日常に潜伏する暴力
 第四節 恐怖の星座
 第五節 母としての不安、加害者となる恐怖
 第六節 戦場としての身体
 第七節 恐怖と不安の中から

第五章 地域コミュニティの集合経験
 第一節 本章の視座-----集合的記憶と個人の体験
 第二節 地区の集合経験を象徴するビジョン
 第三節 空間の身体経験が媒介する集合的記憶
 第四節 語りを通じて伝播する感情と記憶
 第五節 感情と身体にうったえかける記憶物語

第六章 和平への葛藤
 第一節 本章の視座---社会変容と自己像の亀裂
 第二節 行きつく場所なき物語
 第三節 隠されていた過去との出会い
 第四節 紛争のなかでの幸せな子ども時代
 第五節 ノスタルジーと歴史意識
 第六節 帰属への切望
 第七節 生きられた物語の意味をめぐって

第七章 時間を旅する歴史経験—間世代的な記憶
 第一節 本章の視座----遠い昔の記憶
 第二節 「歴史は繰り返す」
 第三節 忘却されたカトリック・アイルランド兵
 第四節 間世代的な記憶

第八章 対抗的物語と対抗的語りの行為
 第一節 移行期社会における支配的物語と対抗的物語
 第二節 対抗的物語の二つの次元
 第三節 コミュニティ間の友情と恋愛
 第四節 対抗的物語の座をめぐって
 第五節 日常と紛争状況の文脈を置き換える
 第六節 歴史と戯れるということ

第九章 長期紛争の記憶を語るということ
 第一節 「紛争という日常」の筋なき物語
 第二節 関係性と身体知を土台とする記憶の伝達・共有

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内容説明

民族紛争と政治暴力

その歴史において暴力と結びついた土地、北アイルランド。
長期紛争のなかでの日常経験や人間関係に着目し、綿密な聞き取りから人びとの紛争の記憶と物語に迫る。

本書は、30年つづいた北アイルランド紛争の記憶の民族誌である。中心となるのは、とらえがたく漠とした生活の記憶や、益体なきものに見える日々の噂話やおしゃべりが、いかに人と地域コミュニティの価値規範を根底において支え、ある政治経験・歴史経験が「共有されている」という意識を涵養してきたのかという関心である。

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