目次
一 私にとっての老病死
二 本書の構成と内容
第Ⅰ部 中央政局に登場する著名人の老病死
一 長年の研究と近年の研究の特色
二 超高齢化社会の到来と問題点
三 中央政局に登場する著名人の老病死
①江戸時代後期の特色
②幕末維新期の特色
ア 孝明天皇の苦悩
イ 身近なものとなった死
ウ 自然死を想定しえなくなる社会状況の到来
エ ストレス社会の到来
オ 政治的な死がその後の政局におよぼした影響
カ 若者のはたした役割と老人
キ 老人に残された時間と使命感
ク 会沢正志斎の誠実な老学徒としての姿
ケ 小笠原長行の回顧談
③著名人の老病死にまつわる話
ア 矢部定謙(幕府倒壊の前兆になったと思われる死)
イ 孝明天皇と鷹司政通
ウ 島津久光・小松帯刀・西郷隆盛
エ 三条実美の精神錯乱
オ 維新三傑の死
カ なぜ徳川慶喜は長寿を全うしえたのか(長寿の秘訣)
第Ⅱ部 地域指導者と民衆の老病死
一 中村平左衛門と彼の家族
①中村平左衛門のプロフィール
②日記の特色
③大庄屋の職務内容と地域住民
ア 享保の飢饉と供養・仏事
イ 疫病の流行
ウ 年貢収納にむけての大庄屋の対応策
二 中村平左衛門の老いと病気
①平左衛門の性格・趣味・家族
②母親との関係
③平左衛門の病気と老いの進行
④妻の死と伊勢参宮
三 地域住民の暮しと老病死
①喧嘩や盗難事件
②村人にとっての娯楽
③村人と老病死
④老人・難渋者(生活困窮者)対策
四 幕末最終段階の中村平左衛門と民衆
おわりに
主要参考文献
あとがき
人名索引
内容説明
その歴史は人びとの体調のせいで変わったかもしれない
歴史学に新たな視野を切り拓く意欲作
日本史上もっとも波瀾に満ちた幕末維新の日々を、人びとはどう生き、何を考え行動し、老い、病み、死んでいったのか。徳川慶喜、孝明天皇などの権力者をはじめ、九州小倉の無名の庄屋・中村平左衛門まで、その人生を、老いと病の視点から捉え直し、存在の奥底にまで迫る歴史学の新たな試み。大病を患った著者自身の経験があったからこそなしえた、ベテラン研究者による円熟の成果。
「振り返れば、私は、ここ数年、老病死の問題を視野に入れない歴史学の研究は不自然だと、折りにふれ書いたり喋ってきた。自分の性分もあって、声高(積極的)ではなく、どちらかといえば遠慮がちにだが、時に訴えてきた。こうしたことの前提にあったのは、これまでの歴史学があまりにも健常者中心(というか、有り体に書けば、健常者の視点のみに立っている)の視点で叙述されてきていることに対する、私の疑問や批判であった。」(本書より)
関連書籍
関連記事
- 書評掲載『老いと病でみる幕末維新』(北海道新聞) - 2015.01.06
- 書評掲載『老いと病でみる幕末維新』(評者:根井雅弘) - 2014.10.03
- 短評『老いと病でみる幕末維新』(読売新聞) - 2014.09.01