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制御と社会

欲望と権力のテクノロジー

制御と社会

物理的アーキテクチャとイデオロギーを貫き作動する「制御」の思考とは何か。管理社会論を更新する大胆かつ超高密度の理論的探求。

著者 北野 圭介
ジャンル 思想
社会
出版年月日 2014/03/30
ISBN 9784409240977
判型・ページ数 4-6・370ページ
定価 本体3,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

 序章 「管理社会」と「制御社会」――ログ・オン
    「制御」という怪物
    「制御革命」は実現したのか
    「監視社会」から「制御社会」へ
    概念の揺らぎへの賭金
    「安全装置」と「制御」
    「社会」についてわたしが知っている二、三の事柄、あるいは「新しい唯物論」にまつわる模索

第Ⅰ部 制御の形態分析――スタートアップ・メニュー

 第1章 制御の三つの形態
  第一節 情報理論史と「制御」概念(1)――自己の制御、他者の制御
    情報、コンピュータ、そして制御
    コンピュータという複合体
    チューリング・マシン、あるいは理念のなかの制御
    ノイマン型コンピュータと自己の制御
  第二節 情報理論史と「制御」概念(2)――自己と他者の関係の制御
    シャノン=ウィーバーの通信理論と他の制御
    ウィーナーのサイバネティックス――関係を制御する

 第2章 制御の動性分析
  第一節 動性をめぐるパラドックス
    三つの制御の運動、その動性
    コンピュータとはいかなる技術か
    人工物(the Artificial)の時代
    あるいはポストモダン思想との共鳴
    計算回路の物理的限界と計算論的臨界
    コンピュータは機械なのか機械でないのか
  第二節 動性のフレーミング・メカニズム
    装置的性向、あるいは(身)体性の消去――「メーシー会議」の行方
    モデル化をモデル化するテクノロジー
    世界/記号/意識の再設定
    動性の世界、動くものよりなる世界図式の作動

 第3章 制御の深度分析
  第一節 メディア、あるいは制御とコミュニケーションが交わるところ
    コミュニケーション・オブセッション
    「メディア」の飽和、症候としての「メディア」
    「メディアはメッセージ」ではない――メディア論を超えるメディア
    三つのコミュニケーション(1)――通信としてのコミュニケーション
    三つのコミュニケーション(2)――社会システム論からみたコミュニケーション
    三つのコミュニケーション(3)――生態学的観点からみたコミュニケーション
  第二節 意思疎通と通信理論の折り重なり
    コミュニカビリティに関わるデジタル・メディア
    情報への欲望、情報へ向かう権力

第Ⅱ部 経済の制御、政治の制御――アプリケーションno.1

 第1章 経済のなかの制御から、制御のなかの経済へ
  第一節 貨幣の制御
    新自由主義とデジタル技術
    グローバリゼーションとデジタル技術
    新自由主義の二段階
    レーガノミックスからクリントノミックスへの移行とは何だったのか
    貨幣制御と金融アーキテクチャのあいだ
  第二節 労働のコミュニケーション化と、身体の制御
    コミュニケーションの構造転換
    金融が市場を呑み込むとき
    意思決定システムをアルゴリズム化する
    制御作動の自己言及スパイラル

 第2章 国家を搖動する制御、統治を誘惑する制御
  第一節 デジタル技術と政治的構想力
    「グローバリゼーション」と「グローバル・ガバナンス」
    デジタル技術と社会体の変容
    「フラット化」か「正義の哲学」か
    「リキッド化」、あるいは「嘔吐的空間と食人的空間」
    現代社会の駆動エンジンとしてのコミュニケーション
  第二節 ネットワークのなかの政治、政治のなかのネットワーク
    ネットワーク、あるいは〈帝国〉の論理
    「〈帝国〉」か「帝国主義」か「想像力」か
    ネットワーク、手続き、熟議
    「調整」と「決定」、あるいは「選択」の論理
    ネットワークによる制御の三側面
    意思決定のプロセス、あるいは統治のサイバネティックス
    制御政治論と制御テクノロジーの間

 第3章 二つの統治術といくつかの情動
  第一節 制御と情動、あるいは局限と放置の暴力
    手続という魔法
    「妬み」と「失望」
    「効用」ではなく「満足」を称える時代
    グローバリゼーションと暴力
    政治経済システムが引き起こす暴力
    「フロー」のなかの「例外状態」
  第二節 存在論的に行使される暴力
    「神話的暴力」と「神的暴力」のもつれ
    正義と犠牲のあいだ
    自己と他者の制御が孕む無意識
    ホッブズ、カント、スピノザ
    「政治経済学」の政治性、あるいは二つの統治性

第Ⅲ部 存在の制御、制御の存在――アプリケーションno.2

 第1章 制御と実存、制御のなかの生活世界
  第一節 制御概念と〈わたし〉の再編成
    制御という神
    「わたし」を聖化する
    「セルフモニタリング」のジレンマ
    コントロールの流動化
  第二節 デジタル・メディアと多層化する生活世界
    「第二の近代」とは何か、あるいはハーバーマスの修正
    生活世界の多層化とモバイル・プライヴァシー
    社会像を希求する社会
    多層式グリッド型整序ツールの装備
    二人のハンナ・アーレント、二つの「社会的なるもの」
    媒介されたコミュニケーションの存在論的もつれと綻び
    デザインのなかの生活世界
    デザインされる快と不快
    「生活世界」=「環境」=「人工物」の時代、その制御の時代

 第2章 制御、偶発性、相互主観性
  第一節 ポストモダン思想の論理的帰結としての偶発性
    誰もが発信できる時代の自己表象
    たまたまそこに居合わせてしまうこと
    偶然性ではなく偶発性という理論的課題――統計学の政治学を超えて
    偶発性の問い――ポストモダンの隘路を理論化する
    偶発性はなぜ今日の問いか
  第二節 制御的思考が馴致する偶発性
    二重偶発性(ダブル・コンティンジェンシー)
    ゲーム理論における偶発性問題の解決
    効用期待の解決法としてのゲーム理論、権力なき権力論としてのゲーム理論
    (ポスト)構造主義を突き抜けるゲーム理論

 第3章 心の制御、脳の制御
  第一節 バイオテクノロジーと制御
    身体論の時代――その噴出と錯綜
    身体論をめぐる哲学的ポジショニング――自然主義か反自然主義か
    「自然」概念は、どこまで「近代」の概念か
    バイオテクノロジー、その「治療を超えた」使用
    「人間」の「自然」を「改善」する「制御」の力
    生物学と哲学の相克
    自然主義/反自然主義という二項対立を脱構築するバイオテクノロジー
    「現代思想」における脳科学論(1)――マッスミ、あるいは情動世界論
    情動の制御可能性
    「現代思想」における脳科学論(2)――マラブー、あるいは可塑性の夢
    可塑性の制御可能性
  第二節 PTSDを自然主義的に制御する
    心身問題を、制御の観点から問い直す
    『DSM』の「PTSD」登録とは何を意味していたのか
    記憶と感情の存在論的身分

 結語 新しい唯物論と新しい形而上学のあいだ――ログ・オフ
    「制御」の考察と疎外論
    「制御」概念を/で駆け抜けることはできるか
    制御により終わる思考と制御から始まる思考

 あとがき
 人名索引

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内容説明

現代世界の最深部に潜行する――

物理的アーキテクチャとイデオロギーを貫き作動する「制御」の思考とは何か。管理社会論を更新する大胆かつ超高密度の理論的探求にして、世界の内奥を摑まんとする人文学(ヒューマニティーズ)の挑戦。

〈コントロールcontrol〉を「管理」ではなく「制御」と訳してみること。そのシンプルな試みから圧倒的強度をもって展開される現代世界の徹底的な読み換え。テクノロジーから人間の意識まで、社会の隅々に浸透し、なお拡大する「制御」という言葉の力を、情報理論から社会、経済、政治、はては脳科学までをも果敢に横断し、余すところなく分析する。人文学における凝縮された理論的研究の成果。

* * *

制御、そして、社会やメディアのプラットフォームを跨いで作動する制御表象の諸システムをめぐる、北野の鮮やかな分析は、メディア分析の厳密な意味での起源へとわたしたちを立ち返らせる。すなわち、個々のテクスト、個々のテーマの冷静な分析のみならず、芸術、政治、生命を横断するメディアなるものについての広範な理論化の作業に、である。映画研究およびメディア研究で、その博識と独創性において際立つ研究者である北野は、本書によって、分野を越え地域を越え、現代における最も重要な理論家のひとりとなるだろう。――リピット水田堯(南カリフォルニア大学)

現在という時制における制御を把握するためには、情報、社会、技術、理論、メディアを別々に扱ってはいけない。特定の理論家について論じても適切ではないだろう。とはいえ、この難題に取り組むことができる人は少ない。21世紀のディスコースを、星座表をつくるがごとく渉猟し、現在時における自己操作の有り様を追う、北野によるこの広大なプロジェクトがどれほどまばゆくても、目を逸らすことは許されない。――アレクサンダー・ツァールテン(ハーバード大学)

序章(PDF)→

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