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核エネルギー言説の戦後史1945-1960

「被爆の記憶」と「原子力の夢」

核エネルギー言説の戦後史1945-1960

1984年生まれの新鋭が描き出す戦後

著者 山本 昭宏
ジャンル 社会
出版年月日 2012/06/15
ISBN 9784409240946
判型・ページ数 4-6・328ページ
定価 本体2,400円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序章
  問いの設定/先行研究との差異/本書の構成

第Ⅰ部 占領と核エネルギーの輿論
 
第一章 占領下の「原子力の夢」
  科学への期待感/原子爆弾と平和/「原子力の夢」の定着
  「軍事利用」と「平和利用」/ソ連の原爆保有と湯川秀樹のノーベル賞受賞
  朝鮮戦争と核戦争の予感

第二章 「被爆の記憶」の編成と「平和利用」の出発
  原爆報道の解禁と「被爆の記憶」の編成/女性誌と経済誌への波及
  被爆写真集への違和感と広島認識の変転
  核エネルギー研究の方向性をめぐって/三村剛昻の反対論
  核エネルギー研究開発体制の成立

第Ⅱ部 原水爆批判と「平和利用」言説の併走 

第三章 第五福竜丸事件と「水爆」の輿論
  第五福竜丸事件の報道/署名運動のおこりと安井郁
  署名運動拡大の要因/原水爆禁止世界大会の開催
  科学者の憂いと核実験の拒否/人文系知識人の反応
  黒澤明『生きものの記録』への否定的評価
  亀井文夫『生きていてよかった』と『世界は恐怖する』

第四章 原子力「平和利用」キャンペーンの席捲
  日本への原子炉導入論/「平和利用」キャンペーンの開始
  第五福竜丸事件と「平和利用」キャンペーン/ソ連の原子力発電成功
  原子力平和利用博覧会/第一回原子力平和利用国際会議
  「被爆の記憶」と「原子力の夢」の接続/夢のなかの夢
  産業界によるキャンペーンの引継ぎ/「平和利用」への疑義

第五章 ブラックボックス化する知
  東海村ブーム/クリスマス島の「汚い水爆」
  コールダーホール改良型炉導入の過程/ベックのリスク社会論
  「危険」と「安全」のポリティクス
  原子力に関する専門知のブラックボックス化/しぼむ「原子力の夢」
  関西実験用原子炉設置反対運動

第Ⅲ部 被爆地広島の核エネルギー認識

第六章 被爆地広島を書く
  阿川弘之の「年年歳歳」と「八月六日」/復員兵が見た被爆地広島
  非体験者が語り直す「体験者の記憶」/「八月六日」の再構成
  大田洋子の『屍の街』/新しい表現の模索と「記録文学」
  『屍の街』の時空間と「語り」の構造

第七章 ローカルメディアの核エネルギー認識
  地方文芸誌『広島文学』の成立/『広島文学』と「原爆文学」
  第一次原爆文学論争/被爆者の実態調査
  文学サークル運動と『われらの詩』/政治闘争的原爆詩の誕生
  大衆文化運動と『われらのうた』/詩の画一化という問題
  「平和利用」キャンペーンと『われらのうた』の反応
  地方文芸誌とサークル誌が紡いだ議論

終章
  「被爆の記憶」と「原子力の夢」の輿論
  その後の「被爆の記憶」と「原子力の夢」/知の共同体の再編へ

あとがき
年表/人名索引

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内容説明

被爆の記憶があったからこそ、 原子力の夢へと向かった戦後日本

19458月、広島・長崎は焦土と化した。戦後日本はその廃墟から、原子力への恐怖と平和への願いを抱き出発したはずであった。しかし、わずか数年後、原子力の平和利用という夢に人々は熱狂する。被爆の記憶があったにもかかわらず、いやそれゆえに…。敗戦からの15年間、原爆と原子力という二つの「核」をめぐって何が言われ、人々はそれをどのように受け止めたのか、中央メディアから無名作家たちのサークル誌までを博捜し社会全体を描き出す、1984年生まれの新鋭デビュー作。

山本昭宏(やまもと・あきひろ)/1984年、奈良県生れ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。現在、日本学術振興会特別研究員、京都大学文学部・立命館大学非常勤講師。専攻は現代文化学、メディア文化史。論文に、「『夕凪の街 桜の国』と被爆の記憶」(『「反戦」と「好戦」のポピュラー・カルチャー』人文書院)、「科学雑誌は核エネルギーを如何に語ったか」(『マス・コミュニケーション研究』79号)、「「ヒロシマ」研究の現状と展望」(『史林』第95巻第1号)、「原爆投下以後、反原発以前」(『現代思想』20115月号)など。

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